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1969☆横浜半実録バンドマン物語☆
by arthurs4 カテゴリ
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1974年2月4日 えらく寒い ヒマだし天気はいいし 健康診断に行ってみるか 親父も気にしてるし 俺自身ちょい心配 アフガンの下痢地獄以来 本調子じゃねえ ついでにパスポートも返納する 関内で降りて ザキの商店街をブラつく 俺のプロドンバデビューの場所だ 毎晩 終わるとレジで2500円もらった 18の学生が稼げる額じゃねえ なんと 綺麗な買い物通りになっちまった いかがわしいバーや飲み屋は消え ピーナツはすっかりキャバレーになってる 2年で変わりすぎだぜ 早すぎるわ 森野のおやっさん どうしてっかな 山下公園まで歩く 車が多い 狭い道路を ウネウネヒュルヒュル なんで そんな急がなきゃいけねえ ドイツのアウトバーン 片側7車線 抜きもしない 抜かれもしない 車線なんか変えないで 走る走る ああいう時間 ああいう国がある 出国の前に種痘打った病院に行く ここは変わってない 古い椅子も同じ おっさん先生 血取って血圧やって 聴診器あてて 肺 腹 背中 異常なし 次に ちっこいトンカチで膝たたいた 二度三度 四度叩いて 「こりゃ△○#)□$がありますね」 なにい!? 河童の屁? 「っは いや 脚気の気」 カッケノケ? バッカじゃねえか だからなんなんだよ ったく 患者を惑わす 河童野郎め 「ちょっと 栄養失調気味ですかね」 気味? ギミってなんだ ですかねって なんなんだあ! はっきりしやがれ このやろ 「一応 お薬出しましょ これ なくなるまで飲んでください じゃいいですよ 次の方どうぞ」 一応?! じゃあいいです?! なんだってんだ ヤブ医者野郎 栄養失調はこれ飲んで治ります ダイジョブですよって 笑顔で素直に 素人に分かるように 言ってみろお!! カッパの屁に ギミ? っけ Gimme gimme か ヴァッキャロ ったく あーあ 旅券返納に山下公園 2年前の3月24日 風の日 この大桟橋から ひとりソ連船に乗った たった2年でこうも変わるかね この景色も 俺もだ・・ ま 日本より何千倍も濃い毎日だった 人は変わるもんだな ほんと 産貿ビル シルクセンター お名残惜しいが 返納しよう しかし もうすっかり自由化だな こんなに混んでやがる 皆金持ってんな 名前呼ばれて カウンター ビザや入出国印でいっぱいの 俺の旅券 ペラペラめくって 係員が言った 「では どうしますか?」 どうしますかって なに? 帰国しちゃったんで 返しに来たんじゃん 「はい このまま返納されるか それとも お手元に持っておくか 選べますけど」 ええ! ほんとかよ じゃ もっとくよ たのむわ 「お待ちください」 ボール盤みたいなもんで押してる 「はい どうぞ」 黒い表紙から裏表紙まで ぐっさりと ポチポチの穴があいてる へえ これで 持ってていいんですか? 「はい もう使えませんので どうぞ」 っへえ 知らなかったぜ そんなの どこにも書いてねえし ポチポチが「VOID」の文字になってる ほおなるほど これで無効ってわけか ま 思い出のパスポートだもんな 役所にしちゃあ イキなはからい 上出来じゃん っひっひ 旅券は無効だけどよ 俺りゃ違うよ 俺の旅は ずっと有効よ っひっひ 生涯 無効にゃならねえ ただいま! 行ってきた 切子が積み上がった工場の入口 ガラッと開けて 親父に検診の報告 おじいちゃんは 具合悪くて 休んでるから 親父とお兄さんだけ 手を止めて 鼻眼鏡にして睨んだ 机に座って ハイライトつける 「どうだったんだ?」 いやなんでもなかった 心配無いって 「あ そうか じゃ良かった まあ まだ顔色は良くないぞ ちゃんと三食食えよ おーい 昼にするかあ」 洗油と粉石鹸でタワシで手を擦る 高校の時 雑用手伝ったが タワシで手の甲 こりゃ痛え 親父の手 踵並み っへっへ 帽子はたいて でかい屁を一発こいて 「よおしっ っはっは」 3歩で玄関入って お勝手に座る お袋の作った 焼き魚におしんこ ほんとに旨そうに食う 親父 親父 自分の旋盤工場持って15年 36の時 長く務めた明電舎辞めて 横浜に来た 俺 8歳の夏だった 学校や社宅の友達と 泣く泣く別れた 親父の約束は ちゃんと果たされて マルキン自転車とテレビを買って貰った 新しい自転車の鮮烈な匂い 泣き止んだ 早稲田の高専夜学 理工機械科行って 昼間工場 夜学校 苦学生ってやつ しかし赤紙が来て戦地へ 南方戦線 そこで負傷 しかもマラリアも 復員したが マラリア再発 完治まで1年も入院してた 親父 「若いうちに体こわしちゃだめだ」 重い独り言 反抗の余地はねえ 昼飯食いながら お袋にも報告 「よかった じゃひと安心だわね 少しゆっくりしたら 仕事しなさいよ」 きたな お袋め 俺はな もうガキじゃねえんだ 2年前とは違う 23だ うん 俺 来月 立川引っ越すわ 「ええ!?」 開いたくちが 塞がらねえお袋 「あんたせっかく帰ってきたのに また家に居ないの? おとうさん!」 親父 「仕事はどうするんだ」 バンドか普通のバイトか やります 家で金せびるわけにゃいかないよ 「っはっは そうか ま 頑張れ」 はい っはっは とは言ったが アテはねえ・・ 俺の才能で なんとかなんだろ っひっひ あーっはっは 晩飯はもう普通 納豆に味噌汁 帰国4日目だ もう歓迎会も終り 飯食って 熱めの風呂に入る うーん やっぱり日本の風呂 肩まで浸かれる 洗い場はあるし 誰が考えたか 世界一だね っひっひ 夜 FEN聞きながら 日記帳並べる 旅で出会った奴等の住所を書き出す 懐かしい名前が なんにんも出る ・・奴等に会いに行くかな 社会復帰の状況を聞いてみたい ヒッピー旅と日本の生活 このギャップをどうしてんのかね 2月5日 朝飯食って 河童のイチオウ薬飲んで 五反田行ってみる っへっへ 3年前 印刷工場でバイトした あん時のおやっさんでも居れば バイトの話できるかも・・ 工場は変わってねえ 勝手は知ってる 裏に回って作業所に行ってみた やっぱりな もう知ってる顔は居ねえ しょうがねえ 帰ろ 守衛所通った時 居た! 居たぜ 「おやっさん ご無沙汰してます」 おやっさん しばらく俺の顔覗いて 「ああ どしたの?」 いやあ またバイト無いかと思って それより なつかしいですね 「俺はわかんないよ 新聞で応募とか 部署通さないとな」 あんだけ一緒に仕事してたのに なんか素っ気ねえ返事 マンサラ顔 「俺 今主任なんだ 忙しいからまた」 奥へ消えた そういやあ作業服も違う あーあ そうか そうだよな おやっさんも変わったんだ 偉くなって 帰りの京浜東北 車両も変わったのかよ 中高6年通った 見慣れた景色 線路際にビルが建って 遠くが見えねえ 町も変わった みんな変わったんだ しかし 日本のスピードは早すぎる ロンドンなんか 50年経っても 路地までわかる そういう国だ 家帰ったら 小雨が降ってきた 日本の雨は 細い 優しい インドやバンコクじゃ スコール 晴れてるのに 急にヴァシャーッときて 15分 ピシッと止んでパッと晴れる 南国の暴れ雨 懐かしい 晩飯食って みんなはテレビ 俺 部屋入ってテープレコーダー出す 4.5年前作った曲を聞く っへええ 我ながらいい曲じゃねえか っへっへ ・・中2でタイコやって5百円もらった 川崎のバー リヤカーで楽器運んだ あんときゃ 中卒の月給が一万もねえ それが一晩2時間で5百円 それがやみつき バンドやったり柔道やったり軟派したり なんでもありの学生生活 高2まで 急に真面目んなって 受験スパートかけた 三当五落 5時間寝たら受からねえ ナポレオンは3時間寝て 天下取った ふーん じゃ やってみっか FEN聞いて ラジ関できのうの続き聞いて 高崎一郎のオールナイトニッポン聞いて 参考書やって教科書やって 色々やって バカみてえに 顔真っ白にして っけっけ 入学試験の頃 安田講堂が占拠された この寒いのに 放水されてやがる っけ カクマルだミンセイだ ナンダカンダ 全国の大学がこんなんなってるなんて 高校も親も 誰も言わなかった そんで大学入ったらロックアウト 笑ったぜ 勿論 入学式なんか やりゃしねえ 初日 正門閉めて机7段も8段も重ねて 守衛のドアから 申し訳なさそうに入ったら 黒と赤の墨書きの 二畳敷きの立て看 ヘルメットに 暑苦しい手ぬぐい覆面 ワレワレワー しか聞こえねえ喧しいアジ 掲示板には<本日の講義はありません> ヴァッキヤロー なんだってんだ たまーに授業があったが 生徒2.3人 何しに来たんだ 俺はよお 単位にならねえが ほかの学部が面白い でも単位がなんだよ カンケーねえ 学校がぐしゃぐしゃで なにが卒業だ 哲学も美術も デュモリンもラブも最高だった で 5月 完全にあきらめた 楽器屋と本屋 はしごの数カ月 お茶の水で買った オープンリール ギターと歌で 曲録ってたわけだ 20曲位あった すげえ 忘れてた 腐ってたのか テープが切れた オープンは音はいいけど 切れるしな カセットに移せばいいか っへっへ 冬の夜は こういうのに限る ―――――つづく――――― ![]() ![]()
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